認知行動療法のコラム法とは?気持ちを整理する基本的な書き方

【はじめに】頭の中が「ごちゃごちゃ」で、つらくなっていませんか?

何か嫌なことがあると、そのことで頭がいっぱいになってしまう。「どうせ自分なんて…」というネガティブな考えが、ぐるぐると回り続けて気分がどんどん落ち込んでいく。漠然とした不安に襲われて、何から手をつけていいか分からなくなる。

このような、頭の中が「ごちゃごちゃ」になってしまう感覚に、つらさを感じてはいませんか?

私たちの心は、目に見えないからこそ、一度混乱すると思考と感情が絡まり合い、整理するのが難しくなってしまいます。そんな時に役立つのが、認知行動療法(CBT)の中でも特に有名で、「書く」ことを通じて気持ちと思考を整理するための強力なツール、「コラム法」です。

この記事を読めば、コラム法の基本的な書き方が分かり、ご自身の心を客観的に見つめるための第一歩を、今日から踏み出すことができます。

コラム法とは? なぜ書くと気持ちが整理されるのか

コラム法(思考記録表)とは、認知行動療法の代表的な技法の一つです。ある出来事に対して自分がどのように感じ、考えたかを、決められた欄(コラム)に沿って書き出していく、シンプルなフレームワークです。

では、なぜ書くだけで気持ちが整理されるのでしょうか。その仕組みは、CBTの基本的な考え方に基づいています。CBTでは、「私たちの気分は、出来事そのものではなく、その出来事をどう受け止めたか(認知)によって決まる」と考えます。

コラム法を使って頭の中にあるモヤモヤとした思考を紙に書き出すことで、これまで自分でも気づかなかった考え方の癖や、感情と思考のつながりが見える化されます。これにより、自分の心を少し離れた場所から客観的に眺められるようになり(メタ認知)、感情的な混乱から抜け出すための糸口を見つけやすくなるのです。

コラム法を始める前の準備

コラム法を始めるのに、特別な準備は何もいりません。

準備するもの: ノートとペン、あるいはスマートフォンのメモアプリやパソコンのテキストエディタなど、ご自身が使いやすい「書き出せるもの」があれば十分です。

取り組むタイミング: 慣れないうちは、一日の出来事を振り返りやすい夜の時間など、落ち着ける環境で行うのがおすすめです。気分が大きく動いた時に、その都度すぐに書き出せるように、小さなメモ帳を持ち歩くのも良いでしょう。

コラム法の基本的な書き方(7列コラムの実践ステップ)

ここでは、最も標準的で効果が高いとされる「7列のコラム法」を、一つひとつの列の意味を解説しています。

ステップ①「状況」

気分が動いた時、「いつ、どこで、誰と、何をしていたか」を、客観的な事実として具体的に書きます。ここでは自分の意見や感情は含めず、まるでカメラで記録したかのように、淡々と事実だけを記述するのがポイントです。

ステップ②「気分」

その状況で、どんな気持ちになったか、感情に名前をつけます(例:不安、悲しい、腹立たしい、恥ずかしい)。そして、その気分の強さを0%(全く感じない)~100%(これまでで最大)の点数で表します。複数ある場合は、それぞれに点数をつけましょう。

ステップ③「自動思考」

その状況で、あなたの頭にパッと浮かんだ考えやイメージを、そのままの言葉で書き出します。「~べきだ」「どうせ~だ」といった、検証していない、自動的に浮かんでくる考えなので「自動思考」と呼びます。

ステップ④「根拠」

ステップ③で書いた自動思考が、「なぜ事実だと思えるのか」、その理由や証拠を客観的に探して書き出します。

ステップ⑤「反証」

ステップ④とは逆に、その自動思考が「事実ではないかもしれない」「別の見方もできるかもしれない」と思える、反対の証拠を探します。友人だったら違うアドバイスをくれるかもしれない、過去には例外もあったかもしれない、といった視点で探すのがコツです。

ステップ⑥「適応的思考(別の考え)」

ステップ④(根拠)とステップ⑤(反証)の両方を踏まえた上で、より現実的でバランスの取れた、心の幅を広げるような考え方を見つけ出します。無理に100%ポジティブな考えを探す必要はありません。「~かもしれない」と可能性を広げるだけでも十分です。

ステップ⑦「気分の変化」

「別の考え」に至った後の、今の気分をもう一度、ステップ②と同じように点数化します。少しでも点数が下がっていれば、コラム法によって考え方の幅が広がり、心が楽になった証拠です。

具体例で見てみよう(コラム法の記入見本)

読者の理解を深めるため、日常的なシナリオに基づいた具体的な記入例をご紹介します。

シナリオ例:「友人から送ったLINEに既読がついたが、半日返信がない」

このように、書き出して客観視することで、「嫌われたに違いない」という一つの考えに固執していた状態から、「忙しいだけかもしれない」という別の可能性に気づき、不安が和らいでいるのが分かります。

コラム法を続けるためのコツと注意点

コラム法は1回行えば良いというものではなく、継続して行うことに意味があります。

続けるためのコツ

  • 完璧を目指さない。最初は3列(状況・気分・自動思考)だけでもOK。
  • 無理にポジティブな考えを探そうとしない。「~かもしれない」と可能性を広げるだけで十分。
  • 毎日書けなくても自分を責めない。

注意点

  • 気分の落ち込みが非常に激しい時は、無理に取り組まない。
  • 書くことで、かえってつらい気持ちが強まる場合は、一度中断する。
  • コラム法は、自分を裁くためのツールではなく、自分を理解するためのツールであることを忘れない。

一人で難しい時は、専門家への相談も

コラム法は優れたセルフケアツールですが、一人で取り組むのが難しい場合もあります。 「そもそも、自分の『自動思考』が何なのかよく分からない」 「『反証』や『別の考え』が、どうしても思いつかない」 といった壁にぶつかることは、決して珍しいことではありません。

このような場合は、医師やカウンセラー、訪問看護師といった専門家のサポートを受けることで、よりスムーズに、そして安全にスキルを習得することができます。専門家は、あなたが一人では気づきにくい考え方の癖を客観的な視点から指摘したり、別の考えを見つけるためのヒントを与えたりする、良きガイド役となってくれます。

【まとめ】「書く」ことで、心の主導権を取り戻そう

この記事では、認知行動療法の代表的な技法である「コラム法」の基本的な書き方について解説しました。

コラム法は、頭の中で渦巻いていた思考や感情を「書く」ことで外に出し、それらを客観的に見つめ直すことで、気持ちを整理するための非常に実践的なスキルです。

しかし、実際に気分の落ち込みが強い時や、不安で頭がいっぱいの時に、たった一人で自分の考えに「反証」を見つけたり、「別の考え」を探したりするのは、とても難しい作業でもあります。

そんな時こそ、精神科訪問看護ステーションかがやきを頼ってください。

当ステーションでは、定期的な訪問を通して、看護師があなたと一緒にコラム法に取り組むお手伝いをしています。「一緒に考えると、別の視点が見つかりやすい」「話しながら整理することで、書き出す勇気が湧いた」と感じていただけるよう、私たちがあなたの「客観的なもう一人の自分」となって寄り添います。

自分の思考パターンを知り、心の主導権を取り戻すための練習を、私たちと一緒に少しずつ始めてみませんか。まずはお気軽にご相談ください。

 

 

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