脳の健康寿命を延ばす認知症予防。今からできる3つの習慣

【はじめに】100年時代、脳の「健康寿命」を意識しませんか?

人生100年時代といわれる現代、私たちはただ長生きするだけでなく、「健康で、自分らしく生き続けること」、すなわち「健康寿命」を延ばすことへの関心を高めています。

そして、体の健康と同じように、あるいはそれ以上に大切にしたいのが、判断力や記憶力を保ち、いきいきとした毎日を送るための「脳の健康寿命」です。

認知症は、今や誰もが自分事として考えるべき身近な病気となりました。しかし、不安に思うだけではなく、近年のさまざまな研究によって、日々の生活習慣を見直すことで、その発症リスクを 有意に下げられることが分かってきています。「もう年だから」と諦める必要は全くありません。

この記事では、科学的な根拠に基づいた、今日から始められる認知症予防のための「3つの大切な習慣」を、具体的な方法とともに分かりやすく解説します。

なぜ「予防」が大切?認知症とMCI(軽度認知障害)について

まず、認知症が単なる「物忘れ」ではなく、脳の病気によって記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたしてしまう状態であることを理解しておくことが大切です。

そして、この認知症には「MCI(軽度認知障害)」と呼ばれる、いわば“予備群”の段階が存在します。MCIは、記憶力などに問題は生じているものの、日常生活にはまだ大きな支障が出ていない、健常な状態と認知症との中間にあたるグレーゾーンです。

このMCIの段階で変化に気づき、予防的な介入を始めることが、その後の脳の健康を大きく左右します。MCIの段階で適切な対策を行えば、健常な状態に回復したり、認知症への進行を遅らせたりできる可能性が十分にあるのです。「まだ大丈夫」と思っているうちから意識的に習慣を始めることが、未来の脳の健康を守る鍵となります。

習慣① 運動 体を動かして、脳の血流を良くする

認知症予防において、最も効果的で重要だと考えられているのが「運動習慣」です。体を動かすことは、脳にとって数多くの良い効果をもたらします。

なぜ運動が脳に良いのか?

脳の血流が改善する:体を動かすと心臓のポンプ機能が活発になり、脳にたくさんの酸素と栄養が送り届けられます。これにより、脳の神経細胞が活性化します。

脳の神経細胞を育てる:運動によって、BDNF(脳由来神経栄養因子)という、脳の神経細胞の成長を促し、守る働きを持つ物質の分泌が高まることが分かっています。

認知症のリスク因子を減らす: 運動は、認知症の危険因子である高血圧、糖尿病、肥満といった生活習慣病の予防・改善に直結します。

どんな運動をどのくらい?

特別なスポーツをする必要はありません。大切なのは「楽しんで、無理なく続けられること」です。
まずは「ウォーキング」から始めてみましょう。友人とおしゃべりしながら、あるいは好きな音楽を聴きながら、少し息が弾むくらいのペースで歩くのが効果的です。目標としては、週に3回、1回30分程度を目安にしてみてください。

慣れてきたら、水泳やサイクリング、ラジオ体操、ダンスなど、ご自身が楽しいと感じるものを取り入れると、より長続きしやすくなります。

習慣② 食事 「ブレインフード」で脳に栄養を

「You are what you eat(あなたの体は、あなたが食べたものでできている)」という言葉があるように、日々の食事は私たちの脳の健康状態を直接的に左右します。

認知症予防で注目される食事法

近年、認知症予防の観点から世界的に注目されているのが「地中海式食事法」です。これは、野菜や果物、全粒穀物、豆類、魚、オリーブオイルなどを中心とした食事スタイルで、脳の炎症を抑え、動脈硬化を防ぐ効果が期待されています。

積極的に摂りたい「ブレインフード」

難しく考えず、まずは以下の食品を日々の食卓に意識的に取り入れてみましょう。

◎魚(特に青魚)
サバ、イワシ、サンマなどに含まれるDHAやEPAは、脳の神経細胞を柔らかくし、情報伝達をスムーズにする働きがあります。週に2~3回は魚料理を食べるのがおすすめです。

◎緑黄色野菜と果物
色鮮やかな野菜や果物には、脳の細胞を傷つける活性酸素から守ってくれる「抗酸化物質」が豊富です。様々な種類の野菜をバランス良く摂りましょう。

◎大豆製品
豆腐や納豆、味噌などに含まれるイソフラボンも、脳の健康維持に役立つとされています。

◎ナッツ類、オリーブオイル
くるみやアーモンド、オリーブオイルに含まれる良質な脂質やビタミンEも、脳の老化を防ぐ味方です。

今日からできる食生活の小さな工夫

「いきなり食生活を全部変えるのは大変」と感じるかもしれません。まずは「いつもの食事に、野菜をもう一品追加する」「おやつのスナック菓子を、素焼きのナッツに変えてみる」など、手軽に始められることから挑戦してみましょう。

習慣③ 知的活動と社会参加 脳に良い刺激を与える

脳も筋肉と同じで、使わなければ機能が衰えていきます。日常生活の中で、脳に心地よい刺激を与え、新しいことを学び、人との交流を持つことが、脳の予備能力(認知予備能)を高め、認知症になりにくい脳を作ります。

知的活動で「脳トレ」を

日常生活の中に、頭を使う楽しみを見つけましょう。
読む・書く:新聞や本を声に出して読む、日記をつける、手紙やメールを書く。

考える・解く:パズル(クロスワード、数独など)、囲碁や将棋、計算ドリル。

新しいことへの挑戦:最も脳を刺激するのは、新しいことを学ぶことです。楽器の演奏、語学の勉強、これまで作ったことのない料理のレシピに挑戦するなど、少し難しいと感じることほど、脳は活性化します。

社会参加で人との交流を

認知症予防において、知的活動と同じくらい重要だとされているのが、社会的な孤立を防ぎ、人との交流を保つことです。誰かと会話をすることは、相手の話を理解し、自分の考えをまとめ、言葉を選んで話すという、脳の様々な領域を同時に使う非常に高度な知的活動なのです。

  • 友人や家族との会話を楽しむ。
  •  地域のサークル活動や趣味の会、ボランティアなどに参加する。
  • 地域のイベントや公民館の講座などに足を運んでみる。

ご家庭でできる「回想法」のすすめ

ご家族で楽しく取り組める、脳を活性化させるコミュニケーションとして「回想法」をお勧めします。 これは、昔の写真や馴染みのある音楽、昔使っていた道具などを見ながら、ご自身の過去の経験や思い出を語り合う方法です。

例えば、「この七五三の写真、どこで撮ったんだっけ?」「若い頃によく聴いたこの歌、流行ったよね」といった会話は、脳の奥深くに眠っている記憶を呼び覚まし、心地よい刺激となります。感情が豊かになり、気分を活性化させる効果も期待できます。ぜひ、ご家族団らんの時間に取り入れてみてください。

3つの習慣と合わせて大切なこと

これまで紹介した「運動」「食事」「知的活動・社会参加」の3つの習慣を力強く支える土台として、以下の2つも忘れてはいけません。

質の良い睡眠:睡眠中には、脳に溜まったアミロイドβなどの老廃物が掃除されることが分かっています。ぐっすり眠ることは、脳のメンテナンス時間なのです。

生活習慣病の管理:高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満は、脳の血管にダメージを与え、認知症の大きなリスクとなります。かかりつけ医と相談し、しっかりと管理・治療することが認知症予防に直結します。

【まとめ】未来の自分のために、今日から小さな一歩を

この記事では、脳の健康寿命を延ばすための認知症予防として、「運動」「食事」「知的活動・社会参加」という3つの習慣を解説しました。

大切なのは、「全部完璧にやらなければ」と気負うことではありません。まずは「週に1回、いつもより10分長く歩いてみる」「家族と昔の写真を見て話す」など、ご自身が「楽しい」と感じられることから、一つでも良いので始めてみることです。

その小さな一歩の積み重ねが、未来のあなたの脳を守るための、最高の贈り物になります。ご自身の、そして大切なご家族の「脳の健康寿命」のために、今日からできることから始めてみませんか。

 

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